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マントうさぎ

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マントうさぎの随想「枯れ色」

 庭に猫じゃらしを育てている。毎年梅雨の終わるころ、去年の種がこぼれ、よく似たみどりの細い双葉が庭一面に出はじめると、猫じゃらしを判別して、ところどころに猫じゃらしの叢をこしらえる。他の草も少しは育っていい。来年芽を出す種々のために。猫じゃらしは草の中でも鮮やかな緑色をして、根をしっかり張り、まっすぐに茎をのばしていく。そのきゅっと締まった細い茎ごとに穂をつけて次々に出揃っていく。濃い緑のしなやかな葉叢のなかで揺れる猫じゃらしは、夏の庭でひとしおの風情がある。穂は、出はじめには濃く閉じているのだが、しだいに丸くふくらんでいくと、中にたくさんの花をつけているのが透けてみえる。
 その花が濃いみどりのつぶつぶになるころ、私は猫じゃらしを収獲する。一本。一本。かすかなキュッという音をたててスッとぬける。それを、白くて浅い空き箱にいれて家の中で三日ほっておく。穂は少し色を変えてふくらんでいる。手に取るとパラパラと種がこぼれる。穂を静かに揉みしだくと、その手触りと耳にここちよい感触と音を残して、白い箱の中に緑の種が落ちていく。種を落としきったあとの穂がらを、こんもりとなるようにていねいに束ねて縛り、口の細いビンや壺に入れ、部屋の明るい場所に置く。
 作業が終わると私はほっとして、なんて可愛いんだろうと眺める。このひと束の穂がらは一年をかけて、生成の白い色に変わっていく。次第に手触りがやわらかく獣じみてくる。その束を手に包むと絹のようにやわらかい。その束で頬をなでると、まるで、猫がしっぽでしらっと頬をさわっていく時のようである。
 いったい一本の猫じゃらしにはいくつ種がつくのだろう。クッションを胸に当てて寝ころぶ。目の前にカレンダーの裏を使った白い紙に種を広げる。30粒くらいに数えてかたまりにする。シャツのボタンくらいな丸になる。丸がおよそ15個できた。穂の大きさはまちまちだから、一本を500粒くらいと数えよう。今年は300本は収穫したから種は3×5でおよそ15万粒くらい。ガラスのビンに去年の種が貯めてある。その種も生成の白。その上に今年の15万粒を静かに入れる。白と緑の二層ができた。
 いつかもう種を集める気力もなくなったとき、この種を庭いっぱいに撒いてみたい。
 そしてまた夏がむかえられたら、庭が一面猫じゃらしになっていたら、私の生涯も悪くはなかったなあと、きっと私は思う。
猫じゃらし_e0303636_9522482.jpg

# by manto-usagi | 2013-10-08 00:00
ぞろ目_e0303636_6404762.jpg 近くのバス停前の公園に、デザインを凝った大きな時計がある。もう一年以上もこわれたままだ。時計の針が止まっていればいいのだけれど、針は遅れがちにか進んでいるのかわからないが動いている。いつも今の時間と違う時を示しているので、慣れない人は「時計がちがっていますね」と話しかけてくる。「ええ、故障してるんですよ」と答える。ある日、この街路灯より高い、丸い大時計のガラス一杯に「故障中」と四角い張り紙がされていた。文字は隠れたが、長針の先がいつも違う方向を指してのぞいているので、時計は止まっていないのがわかる。
 雨が降り風が吹き日照りの時が過ぎ、ある大雨の翌朝「故障中」の張り紙が落ちて、道にぺったりと貼りついていた。バスが来たので乗った。猛暑が続いて「故障中」は道の端で干からびながら、いつのまにかなくなっていた。
 ベッドの裾にテレビがある。これはよくないことだと思わない日はない。ベッドの背にクッションを置いて、それにもたれて、リモコンのスイッチをまず押してみるのがくせになっている。ボタンを押して次々に画面をかえて、直ぐに消したあと、本を読んだりしてみるが、夜は疲れているのでまたスイッチを入れる。そのままどうかすると二時間も、観てよかったと思う番組をみたり、結局みなければよかったと思いながら、いくつもチャンネルを変えて全部みたような気になる。その時間は、別にしなければならないことがあるわけではない年寄りの時間だから、それでいいと思うことにして、明日はこの本を読み終えてしまおうと思う。
 さあもう眠い、とリモコンのスイッチでテレビを消す。チャンネル表示のデジタルの画面が時間に変わる。22:22とでている。あっぞろ目だと思う。寝付きが悪く夜中に何度も目が覚める。ぞろ目ってなんだっけ。いいことがあるんだっけと、考えたりして枕を抱いたりしている。眠ったような眠らないような、目が覚めると、暗がりにデジタルの文字が3:33と指している。うとうとしていると文字は4:44である。起きあがってじっと見詰めていてもなかなか5にならない。一分は意外に長いと思う。最近、このぞろ目がなにかにつけてよくでると人に話すと、その人は、頭が変になるとそういうことがよくあるんですってと言った。
ぞろ目_e0303636_6502763.jpg

# by manto-usagi | 2013-09-23 00:00
 わずかばかりの庭だけれど、年々、庭へ出て花を咲かせる作業が億劫になってきた。けれどいつも庭を眺めていたい。花屋で苗を買ってきて、華やかに園芸種を咲かせることをやめることにした。宿根草や毎年種がこぼれて咲く小さな花などが自由に庭を作りはじめた。そこには草の花も慎ましやかな役割を果たす。そして庭は季節がくると自然な枯れ色を見せて、冬を迎え、また春になる。「枯色」と広辞苑で引いてみた。「草木などの枯れた色」とあ り、また「襲枯れ色_e0303636_18155710.jpgの色目」とありそこに美しい日本語の意味を見つけて心を動かされた。そんな感じのする日常を書いてみたくなった。「マントうさぎのブロ グ」を「マントうさぎの随想枯れ色」として新たに始めてみたいと思っている。
# by manto-usagi | 2013-09-18 00:00